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EUGENIO BENNATO /

NCCP / MUSICANOVA

A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z others 
Chinese Pops  Japanese Pops
Alice  AREA / ARTI + MESTIERI  Franco Battiato  Lucio Battisti 
Eugenio Bennato / NCCP / MUSICANOVA  Roberto Cacciapaglia 
Fabrizio De Andre  FORMULA 3 / IL VOLO  P. F. M.  Mike Oldfield 
GARMARNA / HEDNINGARNA  SAMLA MAMMAS MANNA 

 エウジェニオ・ベンナートは、二つのグループの創設に関わりました。一つは、1969年の、NUOVA COMPAGNIA DI CANTO POPOLARE (NCCP)。NCCPは、南イタリアの民族音楽を復活させ、70年代には若者の人気を勝ち得、ナポリ派のアーチストにも広く影響を与えたといいます。ベンナートは6枚のアルバムに関わったのちに袂を分かちました。NCCPは国内のみならず第三世界を含む海外ツアーを果たし、来日もしています。80年代にはメンバーの入れ替わりが激しく、アルバムも作られませんでしたが、90年代に入って "MEDINA"、"TZIGARI" の二枚のすばらしいアルバムを発表、健在振りを見せ付けました。2001年発表の "LA VOCE DEL GRANO" の後、アルバムが出ていないのが気がかりでしたが、2005年には "CANDELORA" でまた復活を遂げました。これからNCCPを聴いてみよう、という方には、入手もしやすい "MEDINA"、"TZIGARI" をまずお勧めします。
 二つ目のグループは、NCCPから分離し、TERESA DE SIO も参加した MUSICANOVA です。ここではベンナートは CARLO D'ANGIO とともにリーダーシップをとり、地中海音楽のみならずさまざまな民族音楽をベースにしながら、ポップセンスをも取り入れた、たぐいまれな才能を持つ作曲家としてのキャリアを歩み始めます。80年代にはソロ名義で、多彩な音楽スタイルを取り入れ、見事に統合したすばらしいアルバムを次々と発表します。さらに、マウリツィオ・スキャパッロの「ドンキホーテ」(1984)をはじめとして、サウンドトラックでも活躍、受賞もしているということです。
 さて、1998年、ベンナートは「タランタパワー」の運動を始めます。それは、若い人々の間に、タランテッラのリズムへの関心を呼び起こそうとするものでした。音楽、映画、演劇を通じて、彼はこのダンスの広がりを促します。1999年から2001年の間に、彼は "LEZIONI DI TARANTELLA" と "TARANTELLA DI GARGANO" の二枚のCDを企画編集します。これらは、南イタリアのさまざまな地域のタランテッラの形態の集成であり、選りすぐりの現地アーティストによって録音された、技術的にも音楽的にもすばらしい作品です。2000年には、"LEZIONI DI TARANTELLA" ツアーも実現させました。ベンナート自身、1999年から「タランタパワー」ツアーを挙行、東ヨーロッパの主要都市を皮切りに、2000年、2001年にはモロッコ、チュニジア、オーストラリア、カナダ、アメリカ、アルゼンチン、スペイン、フランス、アルジェリアを回っています。2001年にはWOMADに参加、さらに「地中海民族舞踏とタランタの学校」をボローニャに創設します。2002年にはアルバム "CHE IL MEDITERRANEO SIA" を発表、ヨーロッパから中東にかけての大規模なツアーも成功させました。
 彼の出発点であった地中海音楽の魅力は、彼の多彩な経歴と飽くことのない芸術的な探究心によって、いまや彼によって最大限に引き出されているといっても言い過ぎではないでしょう。このところようやく再発売されている彼のいくつかの旧作も手がかりに、ぜひエウジェニオ・ベンナートの魅力に触れてみてください。
 なお、彼のバイオについては、公式サイトを参考にしました。
NUOVA COMPAGNIA DI CANTO POPOLARE (N. C. C. P.) 
CICERENELLA 72(08)/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP735
IO GUARRACINO 72(08)/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP733
I GRANDI SUCCESSI ORIGINALI ("FLASHBACK") 72(00)/2CD/ITA/ITA RICORDI 74321751162(2)
*エウジェニオ・ベンナートも在籍していた、70年代初頭の3枚のアルバムからのベスト(リコルディから同じシリーズでいろいろなアーティストの物が出ている)。99年に出た2枚組アンソロジーとは曲目にほとんど重複がない。アルバム未収録のシングル曲もあり、またおそらくリマスターされているようで音もよく、お値打ち。ほとんどの曲がトラディショナルか作者不詳で、デ・シモーネが編曲しているようだ。さすがに演奏もトラディショナルだが、選曲が変化に富むうえ、やはり一人一人の声の個性があまりにも魅力的で、たっぷり2枚でまったく飽きない。
"CICERENELLA", "LO GUARRACINO", "LA SERPE A CAROLINA" ...E LE ALTRE CANZONI 13/3CD/ITA/EU SONY 8883711762
*BMG Ricordi時代の3枚の初期作品は再発されているし、ベスト盤はすでに二枚組のFLASHBACKシリーズで出ていたが、これは2013年に新たに3枚組で、しかも3枚のアルバム名を明示しジャケットもそれぞれのガジェットを並べた風の形で出されたもの。ただ、思っていたのと違ったのは、元の3枚をそのまま+ボーナスというのではなく、バラバラに組み合わせている。その上で、重複して収録されていた一曲("Angelare")が一回だけの収録で(元のテイクが同じだったかどうかは定かでない)その分、"La rumba degli scugnizzi"が収録されて(le altre canzoniってこの一曲だけ・・・)、曲数は同じになっている。もうちょっとボーナス入っていてもいいでしょと言いたくなるタイトルだが、7.94ユーロ、つまり一枚ものの廉価盤ほどの値段を考えれば、造作もよいし文句は言えないか。イタリアにはありがちな、手を代え品を代えの再発売ものとはいえ、こうやって40年前の作品がいまだに売られていることが素朴にうれしい。いい歌がいくつもあるんですよ。
NUOVA COMPAGNIA DI CANTO POPOLARE 73/LP/ITA/ITA EMI 3C064 17900
*1973年のEMI移籍第一弾のライブ。まさか手に入るとは思わなかったので、忘れていたヤフオクのアラートがきて興奮。さほど競り上がることもなく2000円台で無事落札できた。ダブルジャケットで歌詞つき、盤もジャケットも状態が非常によくて、とてもうれしい。ベンナート、デ・シモーネがいるし、ヴェテーレとマウリエッロが揃っている、メンバー的には黄金期と言える。ただ、録音があまりダイナミックレンジが広くないのは時代からして仕方なく、思いのほかおとなしい印象である。とはいえやはりこのメンツのライブが聴けるうれしさは格別である。
LA GATTA CENERENTOLA 76(98)/CD/ITA/ITA EMI4 96690 2
*よく分からないのだがNCCPらが参加した3幕の創作オペラ?のようだ。作者のロベルト・デ・シモーネは、初期のNCCPの主要メンバー。検索すると、オペラの舞台監督でいくつかヒットするのだが、私はオペラをまったく知らないので、同一人物かどうか分からない。タイトルは「にゃんにゃんシンデレラ」といったところだろうか?などと、まったく無責任なことしか言えないが、聴いている分には地中海古楽にNCCPの歌が乗っている風でたいへん面白い。
11 MESI E 29 GIORNI 77/LP/ITA/ITA EMI 3C064-18295
*いい曲がいっぱい、歌唱も演奏もかっちりと仕上がっていて、70年代NCCPの作品としては最も充実した盤ではないか。しかしそれだけに以後のベスト盤に多く取り上げられているので、あとから入手したので逆に物足りなかったりする。にもかかわらず入手したのは、実はジャケットのデザインがNCCPでは二番目に好きだから。一番好きな "STORIE DI FANTANASIA" はいまだ見つからず。
AGGIO GIRATO LU MUNNO 78/LP/ITA/ITA EMI 3C064-18368
*EMI時代の最後のオリジナルアルバム。ファウスタとジョヴァンニの掛け合い、鄙びた民族楽器の響き合いが、素朴さと情感の深さを伝える。CGD移籍後のダイナミックな迫力よりは、こまやかな情感や古楽風の典雅な雰囲気が特徴だったこの時期のNCCPの傑作である。
ANTOLOGIA 73-78(99)/2CD/ITA/ITA EMI 724349840423
*NCCPはリコルディから3枚のアルバムを出した後、1973年にEMIに移り、78年までに7枚のアルバムを出している。このうち、劇伴と思われるシンデレラ以外の6枚は、なかなか手に入りにくくなってしまった。その6枚のアルバムから幅広く選曲された、2枚組全32曲(因みにこの6枚の収録曲は合計58曲だから、半分以上が聞ける)、デジタルリマスターといううれしいアンソロジー。リコルディ時代のクセの強いトラッド以降、CGD時代の完璧に突き抜けた作品群以前という、このバンドの音楽の移り変わりを繋ぐ作品群がこうして楽しめるのは、実にありがたい。が、まあそんなことより、さすがにヴァラエティ豊かな楽曲とファウスタとジョヴァンニの至福の歌声に、どっぷりと浸りきってしまいましょう。
NUOVA COMPAGNA DI CANTO POPOLARE 80/LP/ITA/ITA EMI 3C-054-18502
*73年から76年までの曲からのベスト。収録曲 "TAMMURIATA NERA", "UE FEMMENE FEMMENE", "TAMMURIATA ALLI UNO ALLI UNO", "TARANTELLA (OI MAMA CA MO VENE)", "TAMMURIATA", "ALLA MONTEMANARESE"。
STORIE DI FANTANASIA 81/LP/ITA/ITA PANARECORD CN6001
*やっと入手できました! このバンドも変転しながら続いているわけですが、このアルバムはEMIからCGDに移籍する狭間にあって、おそらくはマイナーレーベルから出されたもので、奇妙だがかわいらしいイラストのジャケットも魅力的です。トータルコンセプト物ですが、コメントによると、それにこだわらず楽しめるように作られているとのことです。EMI時代の古楽寄りの曲想よりは、CGD時代のトラッド志向に、やや軸足は移っている印象です。歌声の素晴らしさは言うまでもありません。
FRIEDRICH GULDA: TALES OF WORLD MUSIC (WAS DIE WELTMUSIK ERZÄHLT...) 81/2CD/DEU/JPN POLYGRAM PHCD-20335/6
*ずばり、珍盤。ここではNCCPの分類に入れてしまったが(このサイトに来てグルダを探す人はいないだろうと思うので)、あくまでもフリードリヒ・グルダのアルバム。グルダは、もともとクラシックのピアニストで、ジャズも好きなのでそっちの作品もあるようだが、ジャンルの超越にこだわった人のようである。このCDは79年にグルダが企画したのか、「世界音楽物語(世界の音楽が語るもの)」というタイトルの、なかなか大仰なテーマのコンサートの記録で、最初は3枚組のLPで発売されたもの。そして、どういういきさつからか、このコンサートの前半に、グルダとほぼ交互に演奏しているのがNCCPなのである。NCCPは日本盤のクレジットではわざわざ「民謡の新しい仲間たち」と訳まで書かれていて、解説も詳しく、不案内な聞き手にも親切である。"Oi nenna, nenna", "Madonna tu mi fai", "Masto Ruggiero", "Pazzonarella mia", "Bim, bum, ba" の5曲を披露。ライブにしては演奏も録音もやや上品な仕上がりに聞こえるが、録音されている拍手を聞く限りでは聴衆の反応はなかなかよいようだ。グルダによるモーツァルトやバッハのピアノやクラヴィコードの曲と交互に聴くNCCPというのも、異様とまではいわないにしても、奇妙な経験ではある。アルバムはその後にグルダとディジー・ガレスピーらとのセッションが入ってこれまた不思議。中半はイラクのウード奏者 Mounir Bashir がやはりグルダとおおむね交互に登場、後半はベーシストやパーカッショニストのソロも挟んで、フリージャズ系のセッションになだれ込む。もちろんNCCPもガレスピーもムニール・バシールもすばらしい演奏を聞かせてくれるのだが、これをもって「世界音楽物語」と呼ぶのはなかなかの度胸がいるし、グルダ自身による能書きも晦渋だ。聴き応えのある2枚ではあるけれど。
MEDINA 92/CD/ITA/DEU CGD 9031-76375-2
*NCCPはEMIの後、PANARECORDというところからアルバムを一枚出し、その後でCGDに移っている。で、このCGD移籍復活作の中身は・・・もう最高です。完璧です。絶対のおすすめです。この情熱たっぷりのメロディとギターやバイオリンの演奏に、独特の力強い唱法による男女の歌の絡み合いを聴けば、もはや何も言うことはありません。しかもこれが全部オリジナル曲なのです。地中海モノにどっぷりとハマった人は必聴です。
TZIGARI 95/CD/ITA/DEU CGD 4509 98307-2
*ダニエレ・セペのナイの調べで幕を開けたとたんに、もうNCCPの世界に引きずり込まれます。タイトルから想像すれば流離の民の悲哀を綴る物語でしょうか。天与の賜物か精進の結実か、おそらくはその両方によって現前する奇跡の声、ジョヴァンニとファウスタの掛け合いはいっそう艶を増し、ふくよかな温かみと切れ味の良さが二つながらに備わった伴奏に乗って、聴くものの情感を極限まで高めます。こりゃもう、聴いてもらうしかないでしょう!!!
INCANTO ACUSTICO 96/CD/ITA/DEU CGD 0630 16313-2
*オリジナルにトラッドを織り交ぜて展開するすばらしいライブ。明るさ暖かさにくるまれながら漂う哀愁、格調高くありながら切れ味の良い演奏、そして何よりもこの声のすばらしさ! 地中海モノに出会ったことの幸せに浸りきってしまいます。何一つ歌っている内容がわからないのに、なぜこんなに感動するのでしょう。それこそが音楽の楽しみ、ミューズの奇跡なのでしょう。
PESCE D''O MARE 97/CD/ITA/ITA EMI 7243 8 23727 2
*アルバムタイトルは FRANCESCO FARALDO のアイデアとあるが、彼はメンバーとしてはクレジットされているのに、曲ごとのパート担当には名前が見当たらない。CARLO FAIELLO とともに、公式にはこのアルバムを最後にグループを離れたようである。しかし何と言っても、あの奇跡の声の持ち主、GIOVANNI MAURIELLO がいないのだ! たしかに新メンバーの力量は十分で、アンジェロ・ブランデュアルディの参加もある。オリジナルの楽曲もすばらしい。しかしながら、テーマのせいもあるのかもしれないが、アレンジや演奏から土臭さがだいぶ抜けているような感じがする。軽く明るい歌が多いのだが、その割りにファウスタの歌をはじめ皆巧すぎるので、不思議なミスマッチ感覚がある。実は次の作品を聴いた上でこれを書いているので、安心して楽しんでいるが、もし次作を聴いていなかったら、少し心配になったかもしれない。なお、98年にはサンレモ参加曲を含む盤が発売されている。
LA VOCE DEL GRANO 01/CD/ITA/ITA HARMONY FHME18
*グループ名からしてもタイトルの解説からしても、このバンドにははっきりとしたイデオロギーがあるのだろうが、聴いているとイデオロギー以上に頑強なエネルギーに覆い尽くされるかのようだ。虫の音に始まり虫の音に終わる本作を聴くことは、あたかも一篇の民俗誌を読み通すかのようだ。硬く強いリズムに鄙びたメロディの個性がすばらしく、大地の堅実な稔りの芳しさを漂わせる。歌も演奏もそのすばらしさは筆舌に尽くしがたい。どの曲にもおいしい箇所が二ヶ所以上必ずあるのだ。私にとっては2001年に発表されたアルバムの中では確実に五指に入る。英語の解説・歌詞の訳がついているのがありがたい。
COLLEZIONE 01/CD/ITA/ITA EMI 5 31665 2
*EMI時代の80年代の作品から、サンレモ参加曲までを含むベスト盤。旧盤はなかなか手に入らないし、"PESCE D''O MARE" が97年版でサンレモ参加曲未収録だった私などにはなかなかお買い得。反面、定番ともいうべき名曲は含まれていないので、ベストではなくあくまでもコレクションである。
CANDELORA 05/CD/ITA/ITA EDEL 0167862RAT
*RAI TRADE / EDEL から待望の新譜、というかもう出ないとあきらめかけていたNCCPの新作に狂喜乱舞だ。音作りはよりサンプリングなども使って今風になり、これでもかという力強さで押し寄せてくる歌も以前よりは控えめといえば控えめ。しかしそれでもファウスタとジャンニの歌声、アコースチックな民俗楽器の響き、郷愁漂う地中海の調べは、紛れもなくNCCPの音だ。もはやNCCPの音でさえあればよい、と思わせる久々の傑作は、私を冷静にさせてはくれない。
LIVE IN MUNICH 11/CD/ITA/EU PAN CLASSICS PC 10249
*期せずして73年のライブとほぼ同時に聞くことになった、2011年、ミュンヘンでのライブ。共通のメンバーはもうヴェテーレしかいないし、録音は格段に良くなっているのだが、やはり同じNCCPである。というのも、このライブはエレクトリックの要素が薄くなって、6年前の前作と比べても、バランスが回帰している。変わらないトラッド愛を、40年分感じる2枚の組み合わせだった。


ROBERTO DE SIMONE
BELLO CANTARE 06/CD/ITA/ITA RAI TRADE RTP100
*ロベルト・デ・シモーネがNCCPでやっていたことの延長線上にある作品になるのだろうか。ギターはじめアコースティックな楽器と歌。クラシカルに洗練されることで古歌の優雅さが際立つ感じ。
ROBERTO DE SIMONE & BRUNO TOMMASO
SPECULA & GEMINI 04/CD/ITA/ITA RAI TRADE 8016190043415
*ブラスを主体としたジャズと現代音楽の作品。デ・シモーネとトマソが交代で作曲している。さて困るのは私はジャズも現代音楽もよく判らないということだが、女性ヴォーカルの入る二曲目は特に印象に残るが、どの曲も難解ではなく豊かでひらめきのある展開がうれしい。


CARLO FAIELLO
LE DANZE DI DIONISO 01/CD/ITA/ITA ORIENTE RIENCD36
*元NCCPのファイエッロの快作。ディオニュソス讃歌に題材をとりながら、タランテッラありライありの変化に富んだ展開で圧倒する。歌も楽器もリズムも、緻密でありながら伸びやか、壮絶なほどの仕上がり。地中海音楽と一言で言っても、さまざまなバラエティがあったことに、今更ながらに気づかせてくれる、まさに音楽の絵巻のような楽しさ。ジョヴァンニ・マウリエッロの声も一曲聴けるのがさらにうれしいが、このすばらしさは決して昔のNCCPへの憧憬ではない。


MUSICANOVA 
GAROFANO D'AMORE 76/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP515
*MUSICANOVAのファーストアルバム。伴奏はアコースチックなギターとパーカッション、バイオリンなどが主。録音はあまりよくないのだが、それが却って街角での演奏のような雰囲気をかもし出しもして、素朴さや哀愁を際立たせている。
MUSICANOVA 78/LP/ITA/ITA PHILIPS 6323 055, (05)/CD/ITA/ITA LUCKEY PLANETS LKP544
*なぜかこの作品だけは(たぶん)再発されずにいて、ずっと探していたのですが、ようやく中古盤で見つけたときはとてもうれしかったです。ジャケットで見ると EUGENIO BENNATO / CARLO D'ANGIO の連名でムジカノヴァがタイトルの扱いです。いやこれはそれにしても、ベンナートの原点とでも言うべきすばらしいアルバムですね。ダンジオやデシオの歌がじつに見事で、演奏もシンプルながら地中海のかおりをこってりと効かせている。タランタパワーの回帰点はここにある。P. S.05年、ようやくLUCKY PLANETSから再発出ました。
QUANNO TURNAMMO A NASCERE 79/CD/ITA/ITA POLYGRAM 522-836-2, (10)/CD/ITA/ITA UNIVERSAL 0602527475295
*組曲形式で物語風に構成されているようだ。軽快で情熱的なギターやバイオリン、哀愁の地中海メロディーにテレーザやダンジョの声が漂い、起伏にとんだすばらしい作品。もう僕には何も言うことはないです。P. S.THE UNIVERSAL MUSIC COLLECTION シリーズ、"ETHNO FORK ITALIA GLI ANNI '70" にも所収。
BRIGANTE SE MORE 80/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP514
*このアルバムには Teresa の名前はない。インストが多く、テレビ番組かなにかのサウンドトラックらしい。この再発シリーズでは珍しく歌詞入りブックレットつきのデジパック。楽曲の雰囲気やコーラスなど、全体に物悲しさが漂っていて、しんみりした気分にさせる。
FESTA FESTA 81(04)/CD/ITA/EU LUCKY PLANETS LKP509
*フォニットチェトラからLPで出ていたが、長らく廃盤だった(CD化されたかどうか知らない)作品がリイシュー。リズムの刻みやコーラスワークが普通っぽいので聞きやすく、バンドの方向性にやや迷いが見られるが、バイオリンやサックス、生ギターの響きや節回しには地中海音楽としての強い個性がはっきり息づいている。聴き応え十分。
COLLECTION 04/CD/ITA/EU LUCKY PLANETS LKP513
*おそらく、今回の一連のリイシューに際して編まれたコンピレーション。3枚のアルバムから選曲されているので、バンドの歴史を辿るにはやや足りないが、いずれも個性の強い曲でまとめられており、彼らの目指す音をとりあえず楽しむには恰好の一枚。


EUGENIO BENNATO 
EUGENIO BENNATO 83/LP/ITA/ITA CGD 20364
*NCCP、MUSICANOVA を経て、満を持してソロワークへと踏み出した一作目。ソロといってもバックのメンバーは多彩で、エスノ風味と明るく洗練されたポップセンスを両立させた曲は粒ぞろい。こどものコーラス、伸びやかな女声ヴォーカル、クラシカルなアレンジなど、さまざまな工夫が随所に凝らされるかと思うと、トニエスポジトのパーカッションや、ロベルトフィクスのサックスや、ルチオファブリのバイオリンが聴きどころを押さえます。南イタリア風の歌声にレゲエ調のリズムが見事に溶け合った一曲目が最高に気持ちよく聴けたなら、もうベンナートにはまることは間違いありません。8曲目はギターのアルペジオに乗せたヴォーカルに始まり、途中からピアノとオルガンが軽やかにテーマを引き継ぐあたりたまりません。10曲目の古楽風のメロディとアンサンブルで大団円。
DULCINEA 84/LP/ITA/ITA CGD 15170, 85/LP/ITA/ITA CINEVOX CIA5060
*4曲入りミニLP。CGD盤とチネボックス-リコルディ盤があって、ジャケットもCGD盤がぺらの袋兼用、チネボックス盤はちゃんとしたジャケットと異なるのだが、中身は私が聴く限りでは同じようだ。DON CHISCIOTTEという人の映画のサントラらしい。DULCINEA とはドンキホーテの理想の女性だ。タイトル曲は生ギターの響きが美しい叙情的な曲、あと二曲はベンナートらしいエスニックな曲。短いので物足りないが、よい曲ばかりだ。
EUGHENES 86/LP/ITA/ITA BUBBLE BLULP1823
*タイトル曲の元気のよさが、ソロデビュー作と同様の方向性を感じさせるが、英語の歌もあり、アレンジ的にポップとエスノの間をさまよっている感じもする。とはいえ、ポップであるにしてもこの歌作りのうまさが、アルバム一枚とことん楽しませてくれる。4曲目は PIETRA MONTECORVINO の歌がまたすばらしい。B面のそれぞれ特徴的なエスノジャズ風味やプログレ風味を楽しんでいるうちに、最後はピアノとストリングス、フレットレスベースのアンサンブルに乗せてなんとも美しくクラシカルな曲で締める。なんという名人芸。
LE CITTA' DI MARE 89(04)/CD/ITA/EU LUCKY PLANETS LKP508
*バブルレコードから出ていたこのアルバムも、2004年のラッキープラネッツからのリプリントまでは見たこともなかった。非常にメロディアスで、バックバンドも洗練された演奏で、それでいて随所に漂う地中海の香りは濃厚。メロディラインの美しさとリズムアレンジにトニーエスポジトのクレジットがあるM2・M4なんか最高。M7はもっとも今の彼への繋がりを感じる曲。生ギターのソロ曲もあれば、映画音楽のような甘く美しいオーケストレーションもあるという辺り、いきなりタランタでは濃そうな人には、この辺りからマイルドに彼の音楽世界に引きずり込んでしまおう。
NOVECENTO, AUF WIEDERSEHEN e altri racconti 90/CD/ITA/ITA BUBBLE CD-BLU 1832
*なぜかジャケットには EUGENIO BEN となっているが、エドアルドとの差別化(イニシャルも一緒で間違いやすいのだ)? でもまあ、この後のアルバムでは BENNATO に戻っていますからちょっと気まぐれでしょうか。ジャケットはたぶん "MILLE E UNA NOTTE FA" と同じ娘さんの写真か、だとすれば子煩悩がうれしい。1曲目のしみじみしたメロディ、2曲目のなんとも軽妙な間奏のフレーズ、4曲目のカルロ・ダンジオ、トニ・エスポジトと組んだキレの良いリズム、6曲目と7曲目はプログレファンも納得の凝ったつくりで、8曲目・9曲目を叙情味たっぷりに盛り上げる・・・申し分なし。いいアルバムです。
MILLE E UNA NOTTE FA 97/CD/ITA/ITA TRING TRI039
*CD再発と知ってイタリアに発注した翌日、中古屋で見つけてしまいました。もちろん買っちゃいました。ちなみにこちらの再発はTRINGからプラケースでナンバーも同じなのに、表紙は親子のアップだけになりました。歌詞なども同様についています。ベスト盤にも代表的な曲は入っていますが、とにかく他の曲も全部よい。このアルバムはかなり現代風のリズムを強調していて、トランスというかそのあたりも意識した作品になっている。しかし、流行りモノに堕すにはあまりにもメロディが魅力的、そこに南イタリアの民俗音楽の土臭さや、ピアソラの曲やそれ風の曲、オペラ風コーラス、子ども(表紙に写っている娘さん?)の歌など、それはもうありとあらゆるものがしっくりと組み合わさって、一曲一曲個性が際立っている。こんなすばらしいアルバムの存在に、最近まで気づかなかったとは! ぜひ再発盤、お聞きください。
TARANTA POWER 99/CD/ITA/ITA DFV0011
*下記の NEW EDITION のほうを先に聞いていたので、若干の曲の入れ替えだけかと思っていたが、本人がヴォーカルを取る曲はすべて別テイク。新版と聞き比べるとやや仕上がりの甘さが感じられるので、up to date されたのかもしれませんが、これはこれで素朴なアレンジ、アコースチックなミキシングで、結局どちらもそれぞれ良いのでした。機会があれば聞き比べをお勧めします。例えば、 "FOGGIA" なんか、"MILLE E UNA NOTTE FA" 所収のヒップホップ調?と本作の素朴な純タランテッラ調?と新版のパワーアップ調?と(ぜんぶいいかげんな説明で済みませんが)三つのバージョンが楽しめちゃいますよ。
TARANTA POWER [new edition] 02/CD/ITA/ITA CNI TC001
*ベンナートのタランタパワー宣言はこのアルバムから。英仏伊三ヶ国語で高らかにタランタパワーを主張して始まる。その主張、乗りましょう! まあとにかくこのアルバムや翌年の新譜をだまされたと思って一度聞いてみてください。この強烈なリズムと、パワーという単純明快な言葉があまりにもぴったり当てはまる歌に圧倒されずにはいられないでしょう。
CHE IL MEDITERRANEO SIA 03/CD/ITA/ECC EDEL ERE0141052
*この「地中海波まかせ風まかせ」("Let the Mediterranean Be")において、タランタパワーはとどまるところを知らずパワーアップ。この03年作では英仏伊三ヶ国語の解説と歌詞・訳詞つきの豪華カラー版インナー入りのデジパックに。おなじみのリズムに、繊細さも増したようで、初めての人でも地中海音楽に入りやすくなったのではないか。よい曲ばかりですが、たとえば前作に引き続きヴォーカル・ソロで一曲参加の PIETRA MONTECORVINO の子守唄なんぞ、耳元で歌われたらワタシは絶対に眠れませんね、でも失神はしちゃうかもしれません(バカ)。それにしても EDEL は良い作品を次々ディストリビュートするなあ。
COLLECTION 04/CD/ITA/EU LUCKY PLANETS LKP511
*一連の作品の再発とともに出されたコンピレーション。過去の作品から幅広く集められていて、"TARANTA POWER" あたりから聞き始めた人にとって便利なアルバム。まだ力強さに主張をすえる前の段階であるが、あまりにもみごとなメロディの数々を楽しめる。しかしオリジナルコンピで15曲目が「ボーナストラック」というのはよく分からないが・・・。
DA LONTANO 04/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP539
*曲目が "TARANTA POWER" と "CHE IL MEDITERRANEO SIA" からで、レーベルも再発の LUCKY PLANET からなので、2枚からのベストねえと見送っていたら、そう疑いつつも(たぶん)人柱覚悟で入手されたYさんから「別物!」との情報。ありがとうございます。というわけで、全て聞き比べたわけではないですが少なくともほとんど別バージョンなので、コアなファンにはちょっとした箸休めですが、ただちょっと意図が図りかねるところもあって、アレンジが地中海風味をポップロックで薄くのばしたようなとでもいうか、なんとなくぼんやりした印象。あるいはその意図は書かれているのかもしれないのですが・・・。このアルバムからタランタパワーに導かれる人がいるかどうかはちょっと疑問。
SPONDA SUD 07/CD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP712
*前作の内容がセルフカバーだったので、オリジナルアルバムとしては、私が見落としていなければ(何せ身の回りには情報がほとんどないので)2003年以来4年ぶりの新作ということになる。前作がどう聞いても納得のいくものではなかっただけに、若干の不安はあったけれども、彼が求めている音楽にはやはり変わりはなかったのだと感激させる傑作である。多彩なテーマに歌い手、演奏者を迎えて、あのタランタのリズムに熱い情熱、秘めた悲しみや深い郷愁、さまざまな人々の想いが交錯し、輝いては退いていくありさまがつづられているように聞こえる。どの曲もすばらしい。待ち続けた甲斐がありました。前作でがっかりした人、もどってきてください。ゼッタイに失望しません。
GRANDE SUD 08/CD/ITA/ITA EDEL 0188512ERE
*ずいぶん早いペースで新譜と思いきや、サンレモ出場記念アルバムのようだ。サンレモ出場曲だけを最近作にくっつけて再発売するアーチストよりは良心的なことに、出場曲の表題曲他、新曲、旧曲のリミックスや再録音と思われるトラックもおりまぜて、いろいろ楽しめる造りになっている。表題作はピエトラが歌うバージョンもあって、これが明るいのにセクシーで、このアルバムではもっともすばらしい出来ではないか。デジパックで歌詞付きカラーインナー入りだが、新曲含めて全体としてアレンジや伴奏がシンプルなので、入門編としては避けた方が良いと思う。同じ曲のバージョン違いがさらに増えたが、聞き比べてみるといかに "Mille e una notte fa" や "Taranta power (new version)" がいかに丁寧に作りこまれたアルバムであったかと再認識させられたりする。荒削りな本作も悪くないのだが。
LIVE IN KAULONIA TARANTELLA FESTIVAL 2009 10/DVD/ITA/ITA LUCKY PLANETS LKP208
*ついにDVDでベンナートが見られる! 彼が来日するという情報で地球博にそれだけのために行こうとしたものの、公演が流れて泣く泣くキャンセルしたワタシとしては、待ちに待った映像だ。ベンナートのタランタパワー活動の一環としてのコンサートのようで、古い町の広場のようなところで、前半は管弦楽付き、後半はバンドスタイルで、なじみの名曲の数々が披露される。スタジオ版よりは当然、荒削りだが、その分、本来のタランテッラの熱狂が伝わる。狭い会場でいわばシューボックスタイプのホールのようなシチュエーションだから、欲を言えばもっと広々とした円形ステージのようなところで見たいなあという印象はあるが、しかし気持ちよさそうに歌うベンナートの姿を見て聞いていると涙が出そうだ。生で見られたらなあ。
BRIGANTI EMIGRANTI - TEATRO MEDITERRANEO DI NAPOLI 23 DECEMBRE 2010 11/DVD/ITA/ITA ARTIS RTSDVD0111
*届いてからもう何度も繰り返し見てしまっている、すばらしいコンサートのDVD。そのすばらしさとは、フェスティヴァル的な熱い盛り上がりではなくて、静かに燃え続ける炎でしょうか。彼は同名の本も出しているのですが、イタリアのいわゆる南部問題を取り上げたコンサート企画のようで、途中、朗読なども入ります。それも含めて、南イタリアの歴史と文化の中に紡ぎ上げられた思いのこもった歌の数々、名曲としか言いようがない Sponda Sud や Ai Naviganti In Ascolt などが、黒尽くめのコーラスや弦の贅沢で密度の濃いバンドと共に奏でられる感激は言いようがありません。09年のカウロニアのフェスティヴァルのDVDも良かったのですが、あちらのオーケストラアレンジがクラシカルでやや違和感があったのに比べ、こちらはオーケストラといってもギター類にチェロ、パーカッションにチャルメラくらいですから、まとまりから言えば断然良いと思います。ゲスト出演のピエトラ・モンテコルヴィノの存在感もすごい。言葉の壁もあって自分にはまるで読みきれていない、アレアやオザンナ、ファブリツィオ・デ・アンドレなどの、音楽と社会とのつながりが、ここにも。
QUESTIONE MERIDIONALE 11/CD/ITA/ITA ARTIS ARTSCD0111
*ここのところDVDも出て感動させてもらったばかりのところで、あまりにもそっけないジャケット写真、EUGENIO とだけ表記された名前、再録曲もあることから、やっつけ仕事的なモノじゃないだろうなと最初疑ったことを告白します。一曲目を聞いて、そのアレンジも余りにもいつものパターンだったので・・・。しかし、通して聞いてみたらこれは素晴らしい新作でした。多彩なミュージシャンをバックに、今まで以上に研ぎ澄まされた構成で、ピエトラやカルロがソロをとる曲もあり変化にも富んでいました。またしばらく、こればかり聞いていることになるでしょう。
CANZONI DI CONTRABBANDO:ANTOLOGIA2016 16/CD/ITA/ITA ICWM1550
*なかなか新譜が出ないので、新しいアンソロジーを購入。おそらく最初の1曲だけは未発表曲か。やはりこれではあまりに物足りない。Taranta Powerは "Da lontano"収録バージョン。"Alfonsina y El Mar" は "Leggenda Argentina" と同じ曲。"Juzzella"がDVDからか。
DA CHE SUD E SUD 17/CD/ITA/EU EDEL CAT0212387FOX
*実に久しぶりのオリジナルアルバム!ということで大いに期待して聴いた。哀愁たっぷりの曲想に、彼の枯れた声とくれば、それで満足しないわけはなく、特に一曲目は盛りだくさんのゲストの声が交わって(美しいコーラスからピエトラのあの声まで)、大切な一曲である。楽曲的には地中海の香気はやや薄め。クリーン目のエレクトリックギター、フランス語の美しい女性ボーカルなどが特徴的かもしれない。タランタパワーの泥臭いエネルギーから、新しい展開が見えたというべきか。ところでもうちょっとスリーブデザイン凝ればよいのにな。


colonna sonora originale - musiche di EDOARDO BENNATO ed EUGENIO BENNATO
TOTO SAPORE e LA MAGICA STORIA DELLA PIZZA 03/CD/ITA/EU BMG 82876587662
*イタリアの子ども達に大人気らしいアニメ映画のサントラ。絵柄はまんまディズニー系。saporeは「味」だから toto sapore を名前とすると味平みたいなもんかな。となると『味平とピッツァの不思議なお話』・・・合ってるかどうかは知りません。エドゥアルドとエウジェニオ・ベンナートが作詞作曲と歌を担当。劇伴やサントラには手馴れているだけあって、本作もそこはかとなく地中海音楽の哀愁を漂わせつつ、場面に応じて自在に曲想を操る飽きさせない展開で、聴いているだけで楽しくなる。なんと PIETRA MONTECORVINO がロック調でパワフルに歌っているM5なんていう、とんでもない聞き物があったりもする。M10のように軽いスウィングの途中に明らかにタランテッラを意識したパートが挿入されたり、ところどころ顔を覗かせるエスニックな味付けに思わずにやりとさせられる。


CARLO D'ANGIO
VIVA IL SUD 10/2CD/ITA/EU LUCKY PLANETS LKP762
*ムジカノヴァ以来のエウジェニオ・ベンナートの盟友とでも言うべきカルロ・ダンジォのソロアルバム。スタジオ録音とライブの二枚組みになっている。スタジオ盤は、アレンジは比較的地味というか控えめで、このボーカルの渋さと、ギターの豊かな響きをしんみりと聞かせる。ダンジォ版のリトゥルネッラで幕を開けるライブ盤は、知っている曲も多く、ダンジォの個性が際立つ。おおらかに歌いあげるヴォーカルがさらに力強く楽しげである。ベンナートの歌の張りつめたような艶はやはり魅力的だが、ダンジォの粗削りだが響きのよい声にも惹かれる。


ALFIO ANTICO QUARTETTO
ANIMA 'NGIGNUSA 00/CD/ITA/ITA ONYX 008
*重い打楽器の響きにつやのある朗詠とでもいうべき声が、呪術的な陶酔へと誘い込む。生ギターにのせて軽やかに歌う歌にも、コントラバスの響きで幕を開けるタイトル曲の叙情にも、地中海への旅愁をそそられます。
ALFIO ANTICO
SUPRA MARI 03/CD/ITA/ITA EDEL 0145952RAT
*ベンナート・ファミリーの一員の打楽器奏者。もともとシチリアの羊飼いで、手作りの打楽器を街角で演奏しているところをエウジェニオ・ベンナートに見出されたというからなんとも劇的なスタート。さまざまな地中海音楽のビッグスターと共演、現在は古楽器、ダブルベース、打楽器の3人のメンバーとともに活動し、このアルバムが作られた。中世の響きと呪術的なリズムに素直な歌声が乗る。鄙びた風情とクールさがあいまった心地よさが個性的。
VIAGGIO IN SICILIA 05/CD/ITA/ITA ALFAMUSIC AFMCD115
*このアルバムは、30年がかりで追求してきたシチリア古代音楽研究の成果とのことらしい。アルフィオのパーカッションにウード、アコーディオンなどの組み合わせで、エキゾチックな響きにわくわくさせられる。
ANTICHI RITMI E NUOVI SUONI DALL'ITALIA MERIDIONALE - I CONCERTI DEL QUIRINALE RADIO3 07/CD/ITA/ITA RAI TRADE RTQ0002
*Palazzo del Quirinale で収録されるラジオ放送の番組ライブらしい。サックス他のRaffaele Brancati, コントラバスの Amedeo Ronga とのトリオ。音響的にも深みがあって、何か神秘的で時間的空間的な広がりを感じさせる作品になっている。


PIETRA MONTECORVINO
SEGNORITA 91/CD/ITA/ITA FIVE MUSIC 513691
*これがアルバムとしては一作目になるようだが、デビューは早いから、もう歌唱力は完成されている。この月並みな言い方ですがあまりにもセクシーな声、さしあたってはこのジャズ系の曲とアレンジに乗せちゃったのは、わかるけど、後の展開を考えるともったいないくらいのものだ。
VOCE DI PIETRA 93/CD/ITA/ITA RTI 1034-2
*アルバムとしてはたぶん2枚目。相変わらずロック・ポップスな曲なので、たとえば "DONNA" なんか南米っぽい曲が合うなあと思ってもエレクトロニックな音が入ると物足りなくなってしまう。ラストの短いピアノバックの曲などがかえって味があったり。しかしまあ、何度も言いますが、この声はすごい。
DEL SUO MEGLIO 00/CD/ITA/ITA DV CDDV6424
*なかなか旧盤が手に入らないので、とりあえずこのベスト盤を入手。メディアプレーヤにかけるとアルバムタイトルは "La Stella Del Cammino" と出る。先行したベスト盤と同内容というかまったくそのもののようだ。声の存在感が圧倒的なので、中途半端な曲では曲がねじ伏せられてしまうかのようだ。そういう意味でタランタパワーとの出会いの妙はまさに運命的だ。
NAPOLI MEDITERRANEA 04/CD/ITA/ITA DISCMEDI DM 885 02
*まあこの2曲目の「オーソレミオ」聴いてみて下さい。こんなのあり?という世界です。このどすの利きまくった、それでいて極上の艶っぽさで、怪しくも妖しすぎる彼女の声には、マジで腰抜けちゃいますよまったく。もちろん、エウジェニオベンナートの企画力、地中海音楽のさまざまな魅力を見せつけるバック陣の実力が、彼女の歌の力に更に肉付けをしています。絶品中の絶品ですね。
ITALIANA 09/CD/ITA/EU LACKY PLANETS LKP748
*彼女の歌うオーソレミオに衝撃を受けて以来、知っている曲がどう料理されているかを聞くのも楽しみの一つ。このアルバムも選曲はバラエティに富み、バッティスティの名曲2曲もすっかり地中海風トラッドの装いになって、新しい魅力にあふれる。この声はたまりません。
PIETRA A META 15/CD/ITA/ITA LUCKY PLANET LKP788
*トラッドなバックに、いつものかすれ声だけれど、このピノ・ダニエーレとマッシモ・トロイージに捧げられたアルバムでは、優しめに聞こえる。どれをとっても彼女の声で艶やかに光り出すような珠玉の曲ばかりが並ぶ。彼女のアルバムとしては異色の作品だが、間違いなく地中海音楽の傑作。
CORPA MIA 17/CD/ITA/ITA LUCKY PLANET LKP789
*出だしからバックの演奏がエレクトロニックになったので、ちょっとびっくりする。しかし歌が始まればその泥臭さはむしろ濃密さを増し、Tonino Carotone とのデュエットでもうガサガサにこすられるような摩擦力で息を呑まされる一曲目である。フリューゲルホルンが響いて少しほっとすると、パーカッシブなボイスサンプリングがちょっとコミカルだったり、ナチュラルな感じで一息つくと次はダンサブルなリズムになったり。6曲目は息子のFulvio Bennatoをフィーチャー。若いから伸びやかな声で、Eugenioに似ているかどうかはまだ分からない。聞き始めの戸惑いにもかかわらず、聴き終えてみれば、彼女の歌の魅力は何物にも代えがたいといういつもの感情に落ち着く。


(artisti vari)
TARANTELLA DEL GARGANO - I CANTORI DI CARPINO - TARANTA COLLECTION - I MASTRI A CURA DI EUGENIO BENNATO 01/CD/ITA/ITA CNI TC002
*エウジェニオ・ベンナートが編集したタランテッラのコレクション。基本ですね。他のアルバムにも収録したり、サンプリングしたりしている曲もあります。Sacco Andrea の声はすごいねえ。とにかく丸々一枚、激しい曲も哀愁の曲も、すべて三連符ノリの正真正銘タランテッラ。
LEZIONI DI TARANTELLA 99/CD/ITA/ITA DFV 0012
*ベンナートのタランタパワーマークつきだが、すでに手持ちの"LA TARANTELLA DEL GALGANO"のほか、"LA TARANTELLA IN CAMPANIA", "LA PIZZICA SALANTINA", "LA TARANTELLA CALABRESE" の4枚のコンピレーションからのサンプラーということらしい。一枚書くとさらに関連盤が出てきてきりがない。誰か「タランタパワーマーク」リストを作ってくれー!といいたくなってしまいます。サッコアンドレアの歌は聞きなれたというところだが、楽器、メロディ、歌にそれぞれ個性豊かな、各地のタランテッラのバリエーションが楽しめる。
GRANDE TRIBUPUGLIA 02/CD/ITA/ITA EDEL 0137082ERE
*タランタパワーマークつきのベンナートのプロジェクトによるコンピだが、ジャンル的には幅広く選ばれていて楽しめる。ヒップホップな SUD SOUND SYSTEM、アコーディオンやマンドリンにジャズ風な女声コーラスもモダンな FEBI ARMONICI、レゲエだったりロックだったりするAPRES LA CLASSE、タランテッラ・ラップとでも言いたくなる不思議なリズムとコーラスの FARAUALLA。ベンナートも "TRIBU PUGLIA" 別バージョンで最初と最後を押さえています。
TRIBUSUD 03/CD/ITA/ITA EDEL 0148132ERE
*タランタパワー・マーク入りのベンナートプロデュースのコンピ。"GRANDE TRIBUPUGLIA" の続編のようだ。軽快なリズムと明るい声の NOVALIA、イスラム色が濃厚な ABBES、トランス風でダンサブルだが洒落た雰囲気の SUN、またまたイスラム色と女声ヴォーカルにダンスリズムが組み合わさる NADHIR、ギターの音などはかなりロックなラップの GRANMA。まったく知らないバンドばかりだが、なかなか楽しめる。ただいずれも、タランテッラそのものとは一線を画しているから、タランタパワーを期待すると拍子抜けする。
BUON COMPLEANNO CHEYENNE! 07/DVD/ITA/ITA CHEYENNE CRD016
*1985年に創立されたシャイアンレコードのアーチストのビデオクリップとライブ映像をおさめたDVD。社長がGiorgio Bennatoという名前なので、ベンナート一族が始めた会社なのだろうか。ナポリのミュージシャンのためのレーベルということで、ここに収められた9組の音楽性は様々である。3曲入っているのがEdoardo Bennato、2曲がBlue Stuff、 Pietra Montecorvino、 Principe & Scoio M.、Tony Cercola、1曲がMusicanova、G. Zito & Diesel、Eugenio Bennato、Enzo Canoro である。当然、エウジェニオ狙いなのだが、名曲 "La citta di mare" のビデオクリップ('86)、かなり微妙な線である。設定がよくわからないうえに、エウジェニオに絡むナゾの女的な日本人か中国人と思われる女性が、まあその、かなりアレです(<汲み取ってください)。逆に非常に素晴らしかったのが Musicanova 名義の "Canzone per Juzzella / Basilicata" で、やはり名曲 "Basilicata" は、音は悪いが迫力のあるライブ映像('87)。これが見れた&聴けただけでも元は取れた感じ。ピエトラは "Segnorita" と "Femmena" で曲が古いので(いずれも'91)タランタ風味がないのと、やはりビデオのつくりがいまいちなので、感動は少ないが、やはりこのドスのきいたという言葉は彼女のためにあるのではないかというくらいのドスのきいた声、聴いていて死にそうだ。他のミュージシャンも、ストレートなロックとか、レゲエみたいなのとか(詳しくないのでレゲエと断定できなくて済まん)、歌はうまいけどちょっとイカレた感じがよくて、それなりに面白かった。

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関連盤
TERESA DE SIO, DANIELE SEPE, EDOARDO BENNATO, GIANNA NANNINI, LUCIO FABBRI, MALAAVIA, TONI ESPOSITO, "SICILIAE - ANTOLOGIA DELLA MUSICA SICILIANA", "CANZONI PER LORO"
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